
愛を耕すひと(字幕版)
「愛を耕すひと」の感想です。
北欧の至宝、マッツ・ミケルセン主演!
もうこれだけで見ごたえ抜群なんですが、デンマークの史実を基にしたという一見お堅い話を実に観やすく描いてくれていたなという印象でした。
本記事は2025年12月23日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
ワンフレーズ紹介
孤独とは何かを考えさせられる。
作品情報
| タイトル | 愛を耕すひと |
| 原題 | Bastarden |
| 原作 | The Captain and Ann Barbara/イダ・ジェッセン著 |
| ジャンル | ヒューマン、歴史 |
| 監督 | ニコライ・アーセル |
| 上映時間 | 127分 |
| 製作国 | スウェーデン、デンマーク、ドイツ |
| 製作年 | 2023年 |
| 公開年(丁) | 2023年 |
| レイティング | G |
| 個人的評価 | ★★★★★ |
あらすじ
18世紀、デンマーク。退役軍人であるルドヴィ・ケーレン大尉は、とある荒野の開拓に名乗りを上げ、貴族位の獲得をその見返りに求めた。しかし、有力者シンケルはそのことが許せず、その土地を奪い取ろうとケーレンの邪魔をし始める。ケーレンは土地の開拓を進めるのと共に、シンケルから逃げ出してきた使用人アン・バーバラや家族に捨てられた少女アンマイ・ムスらと心を通わせていく――。
主な登場人物
(以下、敬称略)
ルドヴィ・ケーレン
(演:マッツ・ミケルセン)
退役軍人。元は庭師だったが、25年という長い年月をかけて大尉の称号を得た。荒れ果てたヒースの土地の開拓に名乗り出る。
アン・バーバラ
(演:アマンダ・コリン)
夫と共にシンケルに虐げられ、逃げ出してきた使用人。ケーレンをそばで支える。
アンマイ・ムス
(演:メリナ・ハグバーグ)
家族に見捨てられた少女。たびたびケーレンの家に盗みに入るが、最終的には受け入れられる。
フレデリック・デ・シンケル
(演:シモン・ベンネビヤーグ)
ケーレンが開拓に名乗り出たことを良く思わない若き有力者。ケーレンの邪魔をするためなら手段は厭わない。
エレル
(演:クリスティン・クヤトゥ・ソープ)
シンケルの婚約者で、伯爵の娘。シンケルと一緒に住んでいるが、横暴な婚約者のことを嫌っている。
アントン
(演:グスタフ・リン)
優しき牧師。なにかとケーレンに協力する。
映画「愛を耕すひと」の感想
映画「愛を耕すひと」の感想です。マッツ・ミケルセンが格好良い! ということで、マッツさまが好きな人にはたまらない映画でした。
万人受けはしないだろう人格
まず言っておくと、マッツ・ミケルセン演じるルドヴィ・ケーレン大尉の人柄はおそらく万人受けしないだろうなと。結構、自分勝手です(笑)。
生い立ちが生い立ちだし、性格が性格なので(?)仕方ないかもしれないんですが、序盤に至っては「こいつ、駄目駄目だなあ……」っていう感じ。それこそ、仮に貴族位を賜ることができたとしたら、シンケルほどクズじゃないにしてもだいぶヤバめな貴族になりそうだよなと、変にドキドキしてしまいました。
いかにも訳ありそうな様子とはいえ、使用人として働いてくれるアン・バーバラ(とその夫)に「報酬はなし」みたいなことをのたまっていますしね。本人からすれば「訳ありを引き取ってやるんだから」ぐらいの気持ちだったのかもしれませんが、働いてくれる人がおらず困っているのは自分だって同じなのにね。
まあ、この辺も徐々に変わってはくる。そこまでいくのにちょっと時間がかかるので、苦手な人は苦手なタイプかもと思わないでもないという感じでした。
私生児なケーレン
ただ、ケーレンのバックボーンを想像すると、これも仕方のないことではあります。
ルドヴィ・ケーレンは貴族の私生児。貴族と使用人の間に生まれた子で、厄介払いのように軍に入れられたという経緯があるそうです。
なんかもう、ねえ。
私生児であれば、正妻や、正妻との間に生まれた子にとってはさぞかし邪魔だっただろうなあ、とか。当然、意図して生まれたわけではないから、その貴族にとっても邪魔な存在だっただろうなとか。あわよくば死んでくれればと思われていたのかな、とか。庶民にも貴族にもなりきれず、軍に入っても居心地良くはなかっただろうなとか!
別に特段貴族のことに詳しいわけじゃないんですが、そういうことを想像してしまいました。
孤独な男
ただ、そういうバックボーンがあって、冒頭時点での孤独な男ができあがったんだと思う。
軍に入れられ、25年もの長い年月をかけて庭師から大尉にまで上り詰めたのは、単にケーレンが野心家だったというだけじゃなく、件の貴族(血縁上の父親)から簡単に排除されないためだとか、そういった意味合いもあるのかなと思うし。それに、貴族位を手に入れたいというのも、劇中で理由が詳しく語られることはなかったけれど、自分の身を守るためということもあるんじゃないかと想像する。もしくは、自力で貴族位を得ることで、自分を捨てた父親に復讐したかったのかもしれない。貴族でないがゆえに軍の中で苦労してきたことで、自分の出自を恥じていたからという可能性もある。
ここら辺は原作には書いてあるのかもね。
孤独とはいったい……
それにしても、孤独とはいったい何かを考えさせられる作品でもありました。
「孤独な男」と先述しましたが、実際、冒頭時点でのケーレンはたいして孤独には見えないんですよね。どちらかと言えば、終盤のケーレンのほうが寂しそう。
それはたぶん、愛を知ったからなんじゃないかなと思います。
なんていうか、こう、幸せを知らなければ悲しみもない、的なやつ。愛される幸福を知ってしまったがゆえの孤独。
マッツ・ミケルセンの演技が本当にお上手で、見ているこちらが苦しくなってくるようでした。
シンケルはヘイトを集めるキャラ
なお、シンケルを演じたシモン・ベンネビヤーグには拍手を送りたい!
この方の存在あってこその「愛を耕すひと」だったことは言うまでもなく。めちゃくちゃヘイトを集めるキャラでしたね(笑)。
恥ずかしながら、この方の存在を存じ上げなかったんですが、調べてみても「愛を耕すひと」以外の代表作が出てこない(短編で「The Pact」という作品があるらしいけど)。実に素晴らしい俳優さんですね。今後のさらなる活躍を期待したい。
ケーレンに感情移入すると、どうしても嫌わずにはいられないすごいキャラ。
ケーレンからすると、まさに父親を前にしたかのような気分だったでしょうね。父親のように使用人やメイドに手を出しているようでしたし、でも立場上、表立って強く反発できないのがまた歯がゆいという。
シンケルはシモン・ベンネビヤーグ以外には演じられなかったキャラだと思いますね。上流階級の人間らしい気品も兼ね備えていて美しかった。
タイトル「愛を耕すひと」
個人的にこれはどうなんだろうと思ったのは、邦題。
「愛を耕すひと」。
センチメンタルで美しいタイトルですね。これはこれで良い。
ただ、原題は「Bastarden」で、これはデンマーク語で「私生児」という意味。「愛を耕すひと」は美しくて好きだし、英語タイトルも「The Promised Land」でそれに近いものを感じてはいるんだけど、個人的にはやっぱり「Bastarden」のほうがしっくりくるかなと。
まあ、英語だと「Bastarden」=「Bastard」らしいので、変えざるを得なかったのはわかるけど。長年にわたり海外で暮らした経験もあるのに「Bastard」にそんな意味があるなんて初知り。世の中、知らないことがまだまだありますね。
なににしても、「愛を耕すひと」は美しいけどあまりしっくりこなかったよっていう話。
映画「愛を耕すひと」が好きな人におすすめの作品
映画「愛を耕すひと」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
映画「愛を耕すひと」が観られる動画配信サービス
※記事執筆時点での情報です(2025年12月23日)。レンタル作品等も含まれます。最新情報はご自身で直接ご確認ください。
| Netflix | U-NEXT | Amazon Prime Video | Hulu | Ameba TV | FOD |
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まとめ:儚くも美しい愛情
観終わったあと「はあ……」と溜め息をつきたくなる映画(※褒め言葉)。
程よい疲労感に、良いものを見たという満足感。没入感もあり、史実を基にしたという一見お堅めなテーマにしては非常に観やすい印象を受けました。
面白かった!
Rotten Tomatoes
Tomatometer 97% Popcornmeter 95%
IMDb
7.7/10
Filmarks
4.0/5.0


