
スマイル
「スマイル」の感想です。
ホラーとしての物足りなさはありつつ、ジャンプスケアは結構好きでした。ジャンプスケアで久々に素で驚いたかも。
サクッと観られる呪い系ホラー。
本記事は2025年08月12日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
ワンフレーズ紹介
笑みを浮かべるのはどんなとき?
作品情報
あらすじ
精神科医として病院に勤めるローズのもとに、ある日、ひとりの患者が運び込まれてくる。カウンセリングをしてみると、彼女は「目の前で大学の教授が自害して以来、変なものを見るようになった」と訴えた。症状の一環だと思い、務めを果たそうとするローズだったが、彼女は突然錯乱し始めたかと思うと、次に不気味な笑みを浮かべて自害してしまったのだった。その後、ローズの周辺でも不可解な出来事が起きるようになり――。
主な登場人物
(敬称略)
ローズ・コッター
(演:ソシー・ベーコン)
救急精神病院に勤める精神科医。ある日、カウンセリングを担当することになった大学生が目の前で自ら命を絶ち、その後不可解な現象に悩まされるようになる。
ジョエル
(演:カイル・ガルナー)
刑事で、大学生の自害を受けてローズに事情聴取をする。ローズの元恋人。
トレヴァー
(演:ジェシー・T・アッシャー)
ローズの同棲中の婚約者。
ホリー
(演:ジリアン・レイサー)
ローズの姉。ローズとはぎくしゃくしている。
映画「Smile/スマイル」の感想
映画「Smile/スマイル」の感想です。正直、思っていたほど怖くはなかったかなという印象。ホラー苦手な人でも観られそう。
不気味な笑み
笑顔=良いこと
とは限らない! というお話でした。
このあたりの描写はとても好きだった。
以前、海外のカフェで働いている時に「Why are you always smiling?(なぜ君はいつも笑みを浮かべているのか)」と聞かれたことがあって。「Are you always happy?(君はいつも幸せなのか?)」とも。
彼からしたら「クソ忙しい時にも常に笑顔を浮かべてやがる……」と疑問に思ったとのことだったんですが。こちらからしたら「そりゃあ接客しているんだもの。忙しくたって笑顔よ」とも思うし(海外の人だって別に忙しくても笑顔で接客する人はする)、「笑顔って幸せなときにばかり浮かべるものじゃないよな」とも思ったんでした。
笑顔っていつ作るの? ということについて考えてみると、いろいろなパターンがありますよね。
幸せなときに浮かべるものもあれば、気まずい! というときに浮かべるときもあるし、つらいのを我慢しているとき、頬の筋肉が引き攣って笑みのような表情になってしまうこともある。中には微笑うつなんていうものもあったりしますし。苦手な人に話しかけられたり、嫌な話題を振られたりしたときにも笑顔でスルーしたりしますね。
そこに「笑み=恐怖を与えるもの」という意味を与えた本作。アイデアとしては好きでした。
怖くないけどジャンプスケアは◎
ホラーとして観ると、正直そこまで怖くないかなと。ホラーが苦手な人でも頑張れば観られそう(頑張って観る必要はあるのかという疑問はナンセンス)。ホラー的な怖さでいうと、映画「ザ・リング」(2002)とかのほうが上。まあ、これはJホラーのじめっとした感じが好きだからこその感想かもしれませんが。
一応、人が首を掻き切る描写などはありますが、そこまで生々しい感じはしませんでした。個人的には物足りなくさえあった。
ただ、ジャンプスケアは好きだった!
普段、海外のホラー作品を観ていると「あ、ここ来るな」というのを察することができたりするんですが、本作でのとあるワンシーンはまったく予想できなかった! 素でビクッとしてしまいました(笑)。
信頼と裏切り
ローズは変なものを見るようになり「これはあの大学生が訴えていた現象だ!」と察しますが、度重なる不可解な出来事に疲弊し、同棲中の婚約者に今自分の身に起きていることを打ち明けます。……結果は推して知るべし。
なんか、このあたりを見ていて「もし同じようなことが起きたら、自分の話を信じてくれる人はいるだろうか」と真剣に考えてしまいました。やっぱり「精神的におかしくなった」と言われるのがオチだろうなとも。
「違う!」と言っても誰も信じてくれない。皮肉にも、それはローズがあの大学生にしたのと同じこと。結局人は、自分が経験しないとわからないということなんでしょうね。というか、こういうのって頭が良い人ほどまずは疑ってかかるということをする気がする。
だって、映画「スモーキング・ハイ」(2008)のソールとかなら普通に信じそうじゃない?(笑)
精神科医として
そして、個人的にはまずローズに「救急精神病院の精神科医としてどうなの?」と思うところがあって。
それは、例の大学生のカウンセリングをしているときに「変なものが見える」と言われ、すぐさま否定の姿勢に入ったこと。随分と突拍子もない話なので信じられないのはある意味当然ですが、ああいうのって、まずいったん話を受け取るところから始まるんじゃないの? と。なんていうか、もう少し寄り添うべきというか。精神科領域には無知なので「そういうものだ」と言われたら、そうなのねっていう感じですが。
精神救急病院で入院病棟があるということは、やっぱりそれなりに重い症状を抱えた人がいるのでしょうし。ああいう態度と取られたら、パニックに陥る人もいそうですけどね。だって、あの大学生が言ったことは結局事実だったかもしれないけれど、たとえそうじゃなくても、患者本人からしたらそれが現実なわけですし。
あと、救急病院で混乱状態にある(つまり、悪い言い方をすれば暴れ出す危険性がある)患者と2人きりでカウンセリングをするものだろうかとも疑問に思いました。
呪いの正体が怖くない
あくまでも個人の意見として聞いてほしいのですけど、海外ホラーの呪いってクリーチャーっぽくってあまり怖くない。映画「アイ・アム・レジェンド」(2007)に出てくるやつとかと同じ。ホラー味が少ない。
あと、本作においては呪いの原因がわからなかったのも怖くない原因のひとつとなりました。まあ、「原因がわからない」って未知の恐怖があるし、使いようによっては怖くなるはずなんだけど。現に、呪いの正体(クリーチャー)は曖昧なままのほうが怖かったはずだと感じているし。
明らかにするところと曖昧に終わらせるところ、そこを逆にしてしまった感じでしたね。
なんていうか、あまりにもクリーチャーっぽいと、ワンチャン物理で戦えそうな気がするよね? っていう。そういう「もしかしたら倒せそう」みたいな見た目が、怖さ半減につながっていたんだと思います。
自分が助かるためならなんでもできるか
例えば「ファイナル・デスティネーション」(2000)のように、順番が回ってきた人を強引に助けて死を回避するとか、「リング」(1998)のようにビデオをダビングして他の人に見せるとか、呪いを回避する方法があるホラーも少なくないと思いますが。
それはつまり、自分が助かるため、あるいは他人を助けるためならなんでもできるかということだと思います。
「ファイナル・デスティネーション」では、助ける側もそりゃあ命懸けだし。「リング」では他人を身代わりにするという倫理的におぞましいやり方だったりする。
でも、回避方法がそれしかなかったらそれをするのかという。
本作にも、そういった回避方法がひとつだけ提示されるのですが、ここに関しては、正直「リング」より精神的にきついものだと思う。死が回避できたとしても普通の生活に戻れるとは限らないので。
自分の命が懸かっていても「何でもできる」という人って、意外と少ないんじゃないかなあ。なんででしょうね、不思議。たぶん、そうして生き残ったあとのことを無意識に想像してしまうからかな。どう考えても、元通りの生活をしている自分を想像できないから。「リング」のように自分の子どもの命が懸かっていれば、どんなことでもやってみせるという親はいるでしょうが。自分のためだけにとなるとね。しかも、寄り添ってくれる人がいなそうな状況ならなおさら。
本作で回避方法が明らかになった時には「残酷なことをしはるで……」と思ったものでした。
映画「Smile/スマイル」が好きな人におすすめの作品
映画「Smile/スマイル」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- ザ・ハント(2020)
- レディ・オア・ノット(2019)
- ローラは眠れない(2019)
まとめ:救いのないホラー
まあ、一応、救いのないホラーに分類されるんでしょうかね。
アイデアとしては好きでした。笑み=良いものばかりではないと。笑顔は時に相手に恐怖を与えることもある。
ただ、ホラーとしてはいまいち。ジャンプスケアがちょっと怖いぐらいでした。
Rotten Tomatoes
Tomatometer 79% Popcornmeter 77%
IMDb
6.5/10
Filmarks
3.5/5.0