SF映画の父とも言われているジョルジュ・メリエス監督が手がけた「月世界旅行(La Voyage Dans La Lune)」は、なんと1902年の作品。
いまや映画史にも名を残す名作中の名作を紹介します。ショートフィルムなので、隙間時間にサクッと観ることができますよ!
作品情報
- 作品名:月世界旅行(原題:Le Voyage Dans La Lune)
- 上映時間:14分
- ジャンル:SF/ショート
- 製作国:フランス
- 公開年:1902年
あらすじ
天文学会に所属する6人の学者たちは、かねてよりの念願だった月旅行の計画を実行に移すことにする。彼らは地球から打ち上げられた砲弾に乗り、ついに月面への到着を果たすが、そこにはこれまで目にしたことのない奇妙な風景が広がっていた。喜び勇んで月の探索を開始したものの、学者たちはその途中で異星人に襲われ、あっという間に生け捕りにされる。
(引用元:シネマトゥデイ「月世界旅行(1902)」)
こんな人におすすめ!
- 映画の中でも特にSFやファンタジーが好き!
- 映画史に興味がある
- 映画は観たいけれど時間がない
- 笑いの沸点が人と少しずれている、かも?
スタッフ・キャスト
- 監督:
– ジョルジュ・メリエス(Georges Méliès) - メインキャスト:
– ジョルジュ・メリエス(Georges Méliès)
– ジュアンヌ・ダルシー(Jeanne d’Alcy)
「月世界旅行」注目ポイント
たった14分という短い時間ながら、独特の世界観で多くの映画ファンを魅了してきた作品です。製作された年代を考えると、ロマンがギュッと詰め込まれているのがわかります。
映画史上初のSF作品
有人宇宙船の打ち上げに成功したのが1961年のこと(史上初の月面着陸は1969年)。
本作が製作されたのはそれより60年ほど前だったのにもかかわらず、ややコメディ寄りで、しかしロマンたっぷりに人類が月面へ到達する様子を描ききったジョルジュ・メリエス監督の手腕たるや。もうなんとも言えません。
もちろん月へのアクセス方法(?)も到達後の出来事も、さらに地球への帰還方法も、すべてにおいてぶっ飛んだ内容になってはいますが、自身の経験をもとに映画界に新たなる可能性を見出したのも彼でした。
監督は元奇術師!?
先に“自身の経験をもとに”と言ったとおり、ジョルジュ・メリエス監督は驚くべき転身を遂げています。彼はもともと、奇術師だったのです。
そんなジョルジュ・メリエス監督。
ふとした偶然の産物ですが、とある出来事から生まれたストップ・モーションの技術を活用し、数々のトリック映画を製作していくことになります。もちろん本作でもさまざまなトリック撮影の技術が駆使されているので、要チェック!
2つある原作
かつてはただの記録媒体だった映画がそのうち芸術へと進化を遂げ、物語性を帯びていく――そんな中で、本作においては驚くべきことに原作があるんですね。
それはジュール・ヴェルヌ氏の「月世界旅行」とH.G.ウェルズ氏の「月世界最初の人間」。
なお、これら2作品にはヒントを得たのみで、内容はほぼ別物だそうです。
気分はさながら舞台鑑賞
ジョルジュ・メリエス監督の作品はいずれもロングショットで撮影されたものばかりで、客席から舞台全体を見渡しているような気分になります。
いまや映画といえばアップだったりズームだったりと多角的に撮影されるのが一般的ですが、当然のことながら、それも昔は“当たり前のこと”ではなかったんですね。
CGもない時代、ここまで美しい背景を作り出せたのはまさに彼だからこそ成せた業。本作では監督から脚本、撮影、演出、出演まですべて自分でこなすという凄技を見せています。
日本でも実は有名
動画(上記参照)を見て、「あれ、どことなく見覚えが……?」と首を傾げた人はいませんか?
それもそのはず。
実はこの作品、日本の某番組でOPに使用されていたんです(しかも歌い手は和田アキ子さん!)。爽やかな曲調に対して「映像が怖い!」と子どもながらにトラウマを植え付けられた人も多いのでは?
実際の作品はロマンに満ち満ちあふれた内容ですよ!
「月世界旅行」を観た感想
なんとも想像力(妄想力とも言う)を掻き立てられる作品ですね。現在のCG技術などから考えるとたしかにちょっとばかりチープな印象を受けるものの、これが1902年当時に作られた作品だと考えると実に素晴らしい!
たった14分の中に研究者たちの会議からロケット製作、月面着陸、月世界人との出会いと戦い、地球帰還と起承転結を見事に詰め込んでいます。
これはある種、まだ確立しきっていなかった映画業界に一石を投じる作品と言ってもいいのではないでしょうか? いいですよね? トリック撮影の技術含め、新しい風を巻き起こすジョルジュ・メリエス監督。ですが、本作をピークに、その影も次第に薄くなっていきます。
あとの作品は多くが似たような設定で、マンネリ化してしまったんですね。それとともに、世間からの興味も失われていったようです。
本格的なSF作品であるにもかかわらず、クスッとできるようなシーンも多々あります。個人的には月世界人を倒した際にボフンボフンと爆発が起こる様子がなんともコミカルで好きでした。あとは……あとは、そう。
地球への帰りかた。
えっ、そんな帰りかたある……!?
思わずポカーン。でも、地球帰還直後の一コマがまたいいんですよね。これは観てからのお楽しみ。まあ、映画監督としてなかなか大成しなかったのは事実ですが、ともあれ、彼の存在がなければ現在の映画の形にはなっていなかったかもしれません。
偶然の出来事からトリック撮影の技術を生み出してしまうなんて、なにがしかの才能すら感じますね。
ノスタルジックでありながら斬新な設定
某人気番組のOPとして使用されていたので絶妙な懐かしさを覚えながらも、作品自体はなんとも斬新な設定。そもそも月面着陸して(感動的瞬間であるはずなのに)最初にやることが“睡眠”というのも思わず笑ってしまいます。
ショートフィルムなので、家事の合間や仕事の休憩中などに観てみてくださいね!
※本記事の情報は2020年11月時点のものです。