「イソップ物語」というと誰もが知るところではありますが、海外文学というだけあって、実際に読んだことがある人はそう多くないのではないでしょうか?
それを再話したのがバーバラ・マクリントックという人。
これからお遊戯会などを控えていて、子どもの舞台劇をどうしようか悩んでいる大人にこそ読んでほしい一作です。
作品情報
出版日 | 2013/1/31 | 出版社 | 岩波書店 |
ジャンル | 絵本 | ページ数 | 48ページ |
おすすめ度 | ★★★★★ |
あらすじ
バーバラ・マクリントックが、イソップのおはなしから9話をえらび、子ども向けに再話しました。子どもたちが19世紀風の衣装をまとった動物のかっこうをして、劇場でおしばいをするという絵本に仕立てています。
(引用元:「イソップのおはなし」裏表紙)
「イソップのおはなし」の注目ポイント
「イソップ物語」の最もポピュラーな9話をギュッと詰め込んだ童話集。読んでいるだけでクスッと笑えるような、共感と反感を呼ぶ物語の詰め合わせです。
『レッスン』がわかりやすい
日本昔話やイソップ物語というような話には、だいたいにして『レッスン』が付きもの。
例えば、『人を騙してはいけない』だとか『善い行いは巡り巡って戻ってくる』だとか。でも、そういった話は直接的に語られるものでなく、物語の文脈や内容からなんとなく読み取っていくものですよね。
それだと小さな子どもにはなかなか伝わりづらい!
と思ったことがある人もいるのではないでしょうか?
ところが、こちらの作品の中では結末がハッキリしていて、『駄目なこと』と『善いこと』がわかりやすく描かれています。
表現的には児童向け
絵本というと幼児向けのイメージが強いかもしれませんが、こちらの作品に使われている表現は少し難しいものが多い印象を受けました。
例えば、
善はいそげ、とばかりに、
(引用元:「イソップのおはなし」P17)
だったり、
だれか通りかかると、手あたりしだいに
など。
親が説明できればいいのかもしれませんが「善はいそげ」だとか「手あたりしだいに」だとか、簡単な単語だけで説明するにはなかなか難易度が高いような気がします。
繊細なタッチのイラスト
絵本ですから、大人が読むに当たって無視できないのは『自分好みのイラスト』であるかどうか!
細かいところまで描き込まれた動物たちの表情は非常に豊かで、見ているだけで楽しくなります。
このまま舞台で上演できそうな
先述のとおり、非常に表情の豊かな動物たち。
さすが
子どもたちが、19世紀風の衣装をまとった動物たちのかっこうをして、劇場でおしばいをするという絵本に仕立てています。
と表記されているとおり、すべての動物たちの立ち居振る舞いはまるで人間そのもの。子どもたちが仮面をかぶってこのとおりに演技をすれば、ひとつの舞台が仕上がってしまいそうです。
お遊戯会なんかの参考にしたい絵本のひとつ。
「イソップのおはなし」を読んだ感想
絵本にしては文字が多い印象でしたが、まるでお遊戯会や劇のワンシーンを見ているかのような感覚でスラスラと読み進められる作品でした。
それにしても、意地悪なキツネ、やり返すツルに価値観の違うネズミ2匹。
いろんな動物が登場しますが、どれもまた愛らしい。そして意外なことに、人間らしい。
19世紀という時代設定ながらもそれを感じさせずに物語を伝えるという斬新な手法は、さすがとしか言いようがありません。
それにしても、イソップ物語はじめとする動物を主軸とした物語だと、キツネが意地悪に仕立て上げられていることが多いですよね。不思議。
個人的に、一番共感とレッスンがあり、物語として好きだったのは「キツネとネコ」のお話でした。気になる人はぜひ読んでみてくださいね!
まとめ:子どもの舞台劇の参考に
最初に登場人物(動物)たちの紹介から始まることからわかるとおり、これはあくまでも人が上演するという体で描かれた「イソップのおはなし」。
大人が読んで、子どもの舞台劇の参考にするのにぴったりです。
無論、きれいなイラストを眺めているだけでも大満足!
※本記事の情報は2021年6月時点のものです。