アミューズメント・パーク(字幕版)
現代ゾンビ映画の巨匠、ジョージ・A・ロメロ監督による作品です。
エンタメより社会風刺要素が強く、言いたいことがかなりストレートに表現されているので、好き嫌いにはっきり分かれるタイプの映画かもしれません。
本記事は2024年03月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
作品情報
タイトル | アミューズメント・パーク |
原題 | The Amusement Park |
ジャンル | ホラー |
監督 | ジョージ・A・ロメロ |
上映時間 | 54分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 1973年 |
レイティング | – |
おすすめ度 | ★★☆☆☆ |
あらすじ
思い切って外の世界に飛び出した高齢男性。扉を抜けると、そこは遊園地(アミューズメント・パーク)だった。男は悪夢に足を踏み入れることになる。
登場人物
(敬称略)
高齢男性(演:リンカーン・マーゼル)
遊園地の中を彷徨う高齢男性。
映画「アミューズメント・パーク」の感想
映画「アミューズメント・パーク」の感想です。社会風刺映画にしては珍しく、監督の伝えたいことが最初からストレートに表現されています。
現代ゾンビ映画の生みの親
本作を作るにあたりメガホンを取ったのは、ジョージ・A・ロメロ監督。
ジョージ・A・ロメロ監督といえば、現代ゾンビ映画の生みの親です。
ゾンビ映画というと「バイオハザード」シリーズや「新感染 ファイナル・エクスプレス」などが人気ですが、こういったモダンゾンビの原型を作った人ですね。「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が有名です。
そんなロメロ監督が手掛けた社会派ムービー。
こんなのも作ってたんだなあと、純粋に驚きました。
問題作がゆえにお蔵入り
1973年に作られた作品であっても、実際に公開されたのは2019年。
どういうことかというと、ずっと未公開の状態になっていたからです。
もともとは、年齢差別や高齢者の虐待を題材に作られた教育映画になる予定だったそう。「教育映画」と聞くと、「じゃあなぜ公開されなかったのか?」と思いますが、そこは「リアルすぎた」の一言に尽きるでしょうね。
もともとは、年齢差別や高齢者虐待について世間の認識を高めるためにルーテル教会がロメロ監督に依頼した企画だったが、出来上がった作品には老人の悲惨な状況が映されており、あまりにもストレートに当時のアメリカ社会を描いた“問題作”だったため、依頼者の判断で封印されていた。
(引用元:映画.com – ジョージ・A・ロメロ幻の未発表問題作「アミューズメント・パーク」、半世紀を経て日本初公開)
高齢者がひたすら嫌な目に遭い続ける映像って、まあ結構衝撃的。
「可哀想」とか「酷い」とか、そういう感想よりもまずなにか受け入れがたい嫌な気持ちになります。とにかくしんどいというか、そんな感じ。
強烈なメッセージ
「高齢者は大事にしましょう」だとか「年齢による差別はいけませんよ」だとか、作中にはおそらくそういったメッセージが強く込められているのだと思うんですが、それ以上に、
いつかはお前も同じ立場になる(老いる)んだぞ
という脅迫じみたメッセージを感じ取りました。
この映画の中でとにかく酷い目に遭っている老人が、未来の自分であるかのような感覚。
ゾワッとしましたね。
特に日本の場合、ただでさえ少子高齢化が進む世の中になっていますから、もしかしたらこれよりさらに酷い目に遭うことになるんじゃ……と老いることへの恐怖さえ感じました。
唯一相手にしてくれたのは子どもという皮肉
作中、唯一相手にしてくれたのは幼い少女でしたね。
まあ、それも「おじいちゃんが絵本を読んでくれているから付き合ってあげるか」ぐらいの感じはしましたけれど、でも、他の大人たちみたいに老人を邪険に扱うことはしませんでした。
なのに、母親は老人に見向きもせず。
ほとんど無視をした状態(まるで存在すらしていないかのように)絵本を片付けて、子どもを連れ去ってしまう。
子どもの頃には、年齢に関係なく純粋に誰とでも関わり合うことができたのに、成長するにしたがってそんなことも難しくなる。
みんな自分のことで精いっぱいで、自分の親でもない老人を気にする余裕なんてないから。
この少女も大人になったら、母親のように老人の存在をなかったことにしてしまうようになるんだろうかと、少し切なくもありました。
体調が悪くなりそうな憂鬱さ
映像を通して、延々と老人が痛めつけられる様子を見させられることになるので、めちゃくちゃ鬱々とした内容になっています。
しんどい。
ただひたすらにしんどい。
体調が悪いときに観ると、確実にさらに具合が悪くなりそうな雰囲気です。
特に盛り上がりや山場があるわけじゃなく、常に同じテンションで展開していくんですけれども、それが余計に痛々しいというか。
何をしても、何をしなくても「高齢」「老人」というだけで社会に虐げられる。
懸命に生きてきた結果がこれだとしたら、なんとも居た堪れないですよね。どんな人でも「生きているだけで丸儲け」と優しくあれる世界であってほしいな。
楽しい場所=遊園地とのギャップ
「なんか嫌だな」と感じてしまったことの原因のひとつには、舞台が遊園地であるということが挙げられると思います。
本来なら、遊園地って楽しい場所であるはずですよね。
子どもも大人も年齢にかかわらず、わくわくして、(良い意味で)非日常が味わえる空間。それが遊園地(アミューズメント・パーク)であるはず。
なのに、この作品の中では、そんな楽しくなくてはいけない場所で老人が痛めつけられる。
年齢を重ねるということは、それだけ人生に楽しみを見つけられるはず(遊園地)なのに、実際はその逆で、生きるのがより大変になっていく。
そんなメッセージを感じ取りました。
映画「アミューズメント・パーク」が好きな人におすすめの作品
映画「アミューズメント・パーク」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 家族を想うとき(2019)
- RAW~少女のめざめ~(2016)
- 処女(2001)
- テルマ(2017)
まとめ:気分が悪くなりそうな鬱映画(褒め言葉)
ジャンプスケアがあるようなホラーではないんですが、これは確かにリアルで怖いなと感じました。
子ども叱るな! いつか来た道。年寄り笑うな! いつか行く道。
本作を観ている最中に思い浮かんだ言葉です。
不景気な日本の現代社会では若者もなかなか苦労しているはずですが、年齢にかかわらず、どんな人もゆったりと生きられる社会になったらいいなと思います(理想)。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 96% AUDIENCE SCORE 70%
IMDb
6.3/10