Melanie Martinez: K-12
メラニー・マルティネス。
アメリカ出身のシンガーソングライターで、本作の脚本と監督を務めています。ダークでキュート、ファンタジーな世界観が好きな人にはがっつりハマる内容でした。
どちらかといえば、映像を楽しむ作品ですが、メッセージ性もしっかりあります。
本記事は2024年04月に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
自分をまず愛してあげなきゃ。
作品情報
タイトル | Melanie Martinez: K-12 |
原題 | K-12 |
ジャンル | ミュージカル、ホラー |
監督 | メラニー・マルティネス |
上映時間 | 96分 |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019年 |
レイティング | PG12 |
個人的評価 | ★★☆☆☆ |
あらすじ
ある寄宿学校にやってきた、他とはちょっと違う風変わりな少女「クライベイビー」。クライベイビーは友人とともに、自分たちを抑圧してくる学校やいじめっ子に立ち向かう!
▼CD▼登場人物
(敬称略)
クライベイビー(演:メラニー・マルティネス)
風変わりな少女。いじめっ子たちには歯並びの悪さ(すきっ歯)をネタにからかわれたりする。魔法の力を持っている。
アンジェリータ(演:エマ・ハーベイ)
クライベイビーの友人。同様に魔法の力を持っている。
映画「Melanie Martinez: K-12」の感想
映画「Melanie Martinez: K-12」の感想です。パステルカラーがふんだんに散りばめられたダーク&キュートな世界観です。たぶん、完全に好き嫌いに分かれる作品。
映画というより長尺MV
ジャンルとしては、おそらくミュージカル映画として振り分けられるであろう本作。
ですが、実際のところは、本人がシンガーソングライターということもあって、映画というより超長めのミュージックビデオといった感じに仕上がっています◎
なお、本作は「K-12」という彼女自身のCD(アルバム)の世界観を映像化したもの。
撮影はブダペストで行われたそうです。
曰く、
そしてその映画の中で、メラニーは、”学校と人生はパラレル世界である”ことを描き出しているという。「学校生活はほとんど人生の縮図みたいなもの。学校で出会った人種には、大人になってからも遭遇するし、理解するまで何度も同じレッスンを受けさせられるのよ」そう彼女は説明する。
(引用元:K-12|HMV&BOOKS online)
とのこと。
これを読んで「ほお~」と思いましたね。
確かに、「早く大人になりたい。そうすれば人間関係で嫌な思いなんてしなくて済むのに」とか思っていた……そんな時もありました(え?)
子どもの頃は、大人になれば虐めみたいな嫌なことをする人なんていなくなるだろうし、わざわざ人を傷付ける酷いことを口にする意地悪な人だっていなくなるだろうと(なぜか)確信的に思っていたんですよね。
でも、実際はそんなこともない。
専門学校や短大、大学でも同じような人種の人は普通にいたし、なんなら職場にだっている。
子どものうちにそういった人たちと関わっておくのがレッスンなのだとしたら、まあ、納得はしたくないけれども、ある種必要なことでもあったんだろうと思います。
ダークでキュートな世界観
メラニー・マルティネスのMVは、だいたいどれもめちゃくちゃ不思議な世界観です。
ダーク、キュート、ポップ、ファンタジー……。
パステルカラーで彩られているのに、どこか不気味な感じで、目を逸らしたくなるような、いや、逆に目が離せなくなるような。
「私の目標は、人を癒すような音楽を作ること」メラニーはそう語る。「だって音楽とアートは最高に過小評価されている最強のセラピーだと思っているから。でも音的な部分では、私自身が感じた、自分の成長を反映したものにしたかった。とても自然な感じで出来上がっていった。音楽ってとても直感的なものだから、ほとんどが一瞬のうちに出来てしまったの」
(引用元:K-12|HMV&BOOKS online)
つまり、可愛いけれどもどこか仄暗い。
それが彼女にとっての世界なんでしょうね。
思春期ならではの繊細さと葛藤
本作でひしひしと伝わってきたのは、思春期ならではの繊細さと葛藤。
例えば、小中学生(あるいは高校生でも)って、なんだかんだグループで行動することが多かったりしますよね。私は女なので女子の事情にしか詳しくないんですが、男性はどうだったでしょう?
少なくとも女子は、進学したり進級したりして環境が変わると、一緒に行動する「友人」を探したりします。良くも悪くも、できれば自分と同じぐらいのレベルの人。価値観や話が合いそうな人。もしくは直感。
まあ、基準はいろいろありますが。
中にはそんなのくだらないという達観した子もいるでしょうし、ある程度成長すれば気にならなくなることもありますが、子どもには子どもなりの同調圧力みたいなものがあったりして、その時いる環境によっては「独りでいると変な目で見られる(嗤われる)」「独りでいると虐めの対象になりやすい」みたいな場合もあります。
みんなと同じでいなきゃ。
みんなと違うと排除されやすいから。
「友人」に囲まれていても、特に楽しくないし、楽しくないのに笑みを浮かべていなければならない苦痛。
本作でもそんな葛藤が描かれていました。
まさに思春期ならではの繊細な心の描写がとってもうまい。メラニー自身も、こういったことで悩んできたんでしょうね。女子の世界が非常にリアルでした。
ボディシェイミングを跳ねのける強い心
「ボディシェイミング」という言葉を知っていますか?
ボディシェイミング(Body shaming)とは、他人の(基本的には変えられない)容姿について否定的な発言をしたり馬鹿にしたりすることを指す言葉です。
「太った?」とかは、まあ、人に対してそこまで直接的に言う人は少ないと思うんですが。
冗談で「デブ」「チビ」「ハゲ」。
家族や恋人含め、親しい人に対して「もっと痩せてた頃のほうが好きだったなあ(笑)」「もっと痩せたほうがいいんじゃない?」。
善意の場合でも、相手がそれを気にしていれば「俺、太ってる子のほうが好みなんだよね」もボディシェイミング。「君、ちっちゃくて可愛いね」なんていうのも、本人が気にしているかもしれないからやめておきましょうね、ということ。
ボディシェイミングは、必ずしも悪意をもって行われるわけじゃないんですよね。
そこまで気にしなきゃいけないの?
まあ、実際、これもあれも駄目と言われたら気は使いますよね。相手が何に対してコンプレックスを抱いているかなんて、たとえ親しかったとしたってすべて把握するのは不可能ですから。
つまり、どういうことかというと、その場で変えられない容姿の特徴について言及するのはやめたほうがいいよね、という考えです。寝ぐせついてるよ、とかはその場で直せるのでOK……みたいな。
と、いうことなんですが。
本作で個人的に面白いなと思ったのが、メラニーは「ボディシェイミングは駄目ですよ」というところに重きを置いていないということ。
どちらかというと、ボディシェイミングは日常的にあるものだけれど、そんなことは気にしなくていい! あなたはあなたなんだ! というメッセージを受け取りました。
自分を愛するということ
こうね、愛の歌みたいなのは正直、聴き飽きているところがありまして。
最近では、あまり歌というものに感情を揺さぶられることがなくなっていたんですけれども(悲しい大人です)。
クライベイビーの言った「自分を愛するのに他人の許可はいらない(意訳)」というセリフにはシビれましたね。※正確な言い回しは覚えていないんですが、確かこのような感じの意味だった……と思う。
他人といえば、親もきょうだいも含まれています。
たまにいますよね。
家族だからと、冗談のつもりかなんなのかわからないけれども、子どもやきょうだいの容姿をからかってくる人(ありがたいことに、私の家族にそれはない)。
子どもの頃からそんなことをされていると、家族だからこそすり込みのようにそれが自分の価値だと思ってしまうかもしれない。でも、本来ならそんなことは気にしなくていい。
だって、自分を愛するのに他人の許可はいらないからね!(二回目)
大人ながらに、勇気づけられる考えだなと思ったまでです。はい。
映画「Melanie Martinez: K-12」が好きな人におすすめの作品
映画「Melanie Martinez: K-12」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 永遠に愛して(2016)
- リベンジ・スワップ(2022)
- ヘアスプレー(2007)
- マーゴ・フーは眠れない!(2018)
まとめ:メラニー・マルティネスの他MVも観たくなる
メラニー・マルティネスの世界観はかなり独特なんですけれども、だからこそ謎の中毒性があります。
本作にハマった人は、彼女の他作品(MV)を観たくなること間違いなし!
ダークでキュート。楽しいこともあれば、決して楽しいことだけではないのが生きるということでもあり、思春期になると、その繊細さがゆえに(もしかしたら一過性の)悩みや葛藤が生まれるかもしれない。
でも、なんとか踏ん張って生きていこう! そんなふうに感じられる作品でした。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER -% AUDIENCE SCORE 90%
IMDb
6.5/10