ある事件が起きた現場に居合わせた4人の男女。
犯人の自供により解決したものと思われていたが、4人の供述によりさらなる真実が明かされていくというような内容です。
芸術性に優れたドラマが見たい人におすすめ!
作品情報
作品名 | Nのために |
ジャンル | ヒューマン、恋愛、ミステリー |
製作国 | 日本 |
主題歌 | Silly(歌:家入レオ) |
原作 | Nのために(湊かなえ著) |
おすすめ度 | ★★★★★ |
あらすじ
「スカイローズガーデン」という超高層マンションに住む野口夫妻の変死体が発見された。そこに居合わせたのは杉下、西崎、成瀬、安藤という4人の男女。
一方、杉下と成瀬が生まれ育った「青景島」で駐在をしていた高野は、島で起きたある事件の真相に疑念を抱いていて――。
時を経て、4人の供述から真実が徐々に明らかになっていく。
おもな登場人物
主人公。青景島で育つ。父親の行動が原因で家庭が崩壊し、食事にも困るような時期があったことから、島を出たあともひとりでは食べきれない分の料理を作ってしまうように。
青景島で育つ。料亭「さざなみ」の一人息子で、ひょんなことをきっかけに杉下と親しくなった。大学進学を機に島を出るが……。
野バラ荘の住人で、野口(夫)の部下。杉下や西崎とは野バラ荘の住人として知り合う。プライドが高く、杉下や西崎に対してはやや見下したような言動が認められる。
野バラ荘の住人で、小説家の卵。杉下や安藤とは野バラ荘の住人として知り合う。作中では、西崎が書いた小説「灼熱バード」が出てくる。
超高層マンション・スカイローズの住人で、奈央子の夫。華々しい世界に君臨し、若くして成功を収めたかのように思えるが、実は……。
貴弘の妻。夫と共に石垣島でダイビングをしていたところ、偶然訪れていた杉下と安藤と出会う。以降、杉下とは一緒にショッピングなどをする仲に。
杉下と成瀬が生まれ育った青景島の駐在。面倒見がよい性格だが、青景島で起きた事件では杉下と成瀬の関与を疑っている。
茂の妻。青景島で起きた事件がきっかけで、声を失った。
「Nのために」の注目ポイント
男女の切ない愛を描いた「Nのために」。杉下という主人公がいながらも、成瀬や西崎といった他キャラクターに感情移入してしまうほどの美しい描写です。
原作が湊かなえ
榮倉奈々さんや窪田正孝さん、賀来賢人さんなど豪華俳優陣が目白押しの本作。この作品の原作になっているのは湊かなえさんの同名小説です。
実に湊かなえさんらしい、人の感情の機微に富んだ作品であったように思われます。
現実世界だったらなんとなくあり得ないだろうと思ってしまうような展開も、湊かなえさんの手にかかれば自然な流れになってしまいますね。マジックみたい!
テーマは『純愛』
湊かなえさんがミステリー界においてなんと呼ばれているか知っていますか?
『イヤミスの女王』です。
ちなみに『イヤミス』とは『嫌な気持ちになるミステリー』のこと。たしかに考えてみれば、メディア化された「告白」や「リバース」などもお世辞にも後味がよいとは言えませんよね。
それがなんと、原作となった小説「Nのために」は『著者初の純愛ミステリー』なんだそうです。
物語にマッチしている主題歌
本作の主題歌は家入レオさんが歌う「Silly」。
歌詞といい、雰囲気といい、これがまた物語の内容と非常によく合っているんですね。連続ドラマを一度に見ようと思うと、主題歌を省いてしまう人も多いかと思いますが、この「Silly」は毎回全部聴いてしまう。
そんな魅力にあふれた曲です。
「Nのために」を見た感想
まず、杉下さんのひたむきさが切なすぎる。
人を信じ、人のために嘘をつき、人のために、人のためにと行動をしてきたのに、最終的には殺人現場に居合わせてしまうなんて。その後も、きっともしかしたら本人にはハッピーエンドなのかもしれないけど、見ている側からしたら「なんでなのおおお!」と叫びたくなる結末。
膝から崩れ落ちました、本当に。
そんな杉下さんにとっての『N』は自分(杉下 希美)であり、成瀬であり、安藤(安藤 望)であり、西崎であったんでしょうね。
野口夫妻しかり、登場人物ほとんどN。
ただ、いろんな登場人物の思惑にスポットライトを当てたこの作品の『N』はそれだけではありません。
成瀬と安藤にとっての『N』は杉下さん、西崎にとっての『N』は野口さん(妻)、野口さん(妻)にとっての『N』は野口さん(夫)……。
学生時代を過ごした島での様子や野バラ荘で笑い合う彼らがよく描かれているからこそ、最後の結末により深い切なさを覚えてしまいます。
たぶん、ハッピーエンド。
「いや、でも、うーん。でもなあ!」と、モヤッとしたものを心の中に残していく感じそれこそが湊かなえさんの真髄といったところなのではないでしょうか!
『初の純愛ミステリー』はまさしくそのとおりなんですが、『イヤミスの女王』の呼び声高い湊かなえさんらしさはしっかりくっきり残した大満足の実写映像化作品でした。
まとめ:スッキリしないからこその
完結したはずなのに、なんだかスッキリしないこの終わりかた。
それなのに、伏線回収はもちろん、構成から演出から、主題歌に至るまですべてが完璧な作品です。「最近のドラマはあまり見ていない」という人でも、小説が好きならおすすめ。
ただのエンターテインメントというより、芸術品を見ているかのような感覚で楽しむことができます。
※本記事の情報は2021年5月時点のものです。