
ルックバック
漫画「チェンソーマン」で知られる藤本タツキ先生の「ルックバック」を原作とした、映像化作品です。
しまった。やられた。
これは劇場に観に行ったほうがよかったやつだ……! 号泣しました。1時間ほどで、なんという満足感。
本記事は2025年04月02日に執筆されました。すべての情報は執筆時点のものです。
ワンフレーズ紹介
外の世界へ!
作品情報
タイトル | ルックバック |
原作 | ルックバック/藤本タツキ著 |
ジャンル | アニメ、ヒューマン |
監督 | 押山清高 |
上映時間 | 58分 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2024年 |
公開年 | 2024年 |
レイティング | G |
個人的評価 | ★★★★★ |
あらすじ
学生新聞で4コマ漫画を描いている藤野は、ある日先生に「4コマ漫画枠を一枠譲ってほしい」と声を掛けられる。不登校の京本の漫画を載せたいというのだ。そんな京本を見下していた藤本だったが、いざ次の学生新聞が発行され、京本の4コマ漫画を見ると、愕然とした。自分の絵とは全然違ったのだ。今までは「うまい」「漫画家になれる」と持て囃していた同級生たちも、手のひらを返すように京本の絵を褒め始める。挫折を感じた藤野は、いったん筆を置くことにするが――。
主な登場人物
(敬称略)
藤野(声:河合優実)
学生新聞に4コマ漫画を載せていた、絵に自信がある女の子。京本の絵に出合ったことで挫折を感じる。
京本(声:吉田美月喜)
不登校で引きこもりの女の子。実は藤野の4コマ漫画のファンで、卒業証書を届けにきた藤野を呼び止めた。
映画「ルックバック」の感想
映画「ルックバック」の感想です。正直、観ようか観まいか迷っていた作品だったのですが、もっと早く観ておけばよかったどころか、劇場に観に行っておけばよかったとさえ思わされるほどの名作でした。
声がぴったり!
お恥ずかしながら、最近の女優さんにはあまり詳しくないのですけど、藤野ちゃんと京本さんの声がとてもよかったです。
藤野ちゃんは河合優実さんが、京本さんは吉田美月喜さんが演じています。
河合優実さんは、映画「あんのこと」(2023)や「ナミビアの砂漠」(2024)に出演していると知って、なるほどと思いつつあまりピンと来ていなかったのですが、「八犬伝」(2024)で浜路を演じた方だと聞いて「あああああ!」と(「八犬伝」は観に行った)。
お二方とも、今をときめく女優さんみたい。とてもよかったです(二度目)。
夢中になるということ
全編を通して、ひとつのことに夢中になるのは素晴らしいことなのだなと改めて思わされました。大人になったからこそ刺さるみたいなところもある。
子どもの頃、ひとつやふたつぐらいあっただろう夢中になれること。
けれど、成長し、大人になるにつれ、才能がないだとか時間がないだとか、はたまたなんとなくだとかで、いつの間にか遠ざけてしまったこと(今、頭の中でBUMP OF CHICKENの『才悩人応援歌』が流れました……)。
実は、私にも「漫画家になりたい」と思っていた時期が結構長くあって(材料も全部そろえ、描くだけ描いていた)、しかも小学生の時には、絵を描くのが好きな友人と自分が描いた漫画を交換したりしていたので、藤野ちゃんと京本さんにめちゃくちゃ感情移入してしまいました。
意地の悪さ=普通の子
藤野ちゃんの性格の悪さ、いいですよね、あれ。
いや、まあ、割と酷いこと言ってはいるんだけれど。
変に子どもを美化していないというか、不登校の子に対する風当たりって、だいたいあんなもの。私はどちらかと言えば京本さん寄りの子どもだったので「うっ……」と胸が痛んだし、あの瞬間、藤野ちゃんのことがちょっぴり嫌いになりましたが。
でも、普通の子なんだなあと感じたのです。
見栄っ張りで、性格が良いわけでもなく、どこか斜に構えている捻くれた普通の子。
幼いがゆえに価値観もブレブレで、大人が言っていたこととかを、さも常識であるかのように語ってみたりする。小学生の頃ってこんな感じだったかもなと思わされます。
思春期ならではの同調圧力
また、藤野ちゃんが受ける同級生からの同調圧力もリアルでよかったですね。
ああいう子、いたよねって。「みんな言ってるよ」などと、言わなくてもいいことをわざわざ口に出す子。
きっとあの子は「私はそう思わないんだけどね、あの子があなたのことこんなふうに悪く言ってたよ」とか、他人が言っていたらしい悪口をこっそり伝えてくるタイプ(ド偏見)。
ここでの藤野ちゃんは、少し可哀想だったかな。
自分ではただ好きなことをしていただけなのに、同級生の一言で「それ(絵を描くこと)を恥ずかしいと思う層がいる」と気付かされてしまったのだから。
他人と比べる必要はない
藤野ちゃんは、京本さんの描いた4コマ漫画を見て衝撃を受け、一度挫折してしまいましたが、練習に練習を重ねた藤野ちゃんの絵は、圧倒的にうまくなっていましたよね。
成果は出ている。でも、藤野ちゃんは挫折した。
確かに京本さんの絵はうまかったけれど、そもそも藤野ちゃんとは絵のタッチが違うから、比べるべきでなかったのだと思います。
みんな違ってみんないいの世界になればいいのになあ、と。
だけど、いざ自分が当事者になってみると、きっとそんなふうに客観視できることばかりじゃないから、世の中って難しいですね。
藤野ちゃんの思う「こうだったらよかったのに」
そして、本作に登場した藤野ちゃんの妄想世界。というか、こうだったらよかったのにが詰まったif世界という感じでしょうか。
「自分が彼女を外に連れ出していなかったら」と言いつつ、この世界でも京本さんはしっかり美大に入っているんですよね。
藤野ちゃんは、心の底でしっかりわかっていたんじゃないかなと思います。
自分がいなくても、京本さんはいつか外に出て、大好きな絵を続けていただろうこと。それに、藤野ちゃん自身、ずっと絵を描き続けてほしかったという願いもあったはずですし。自分は漫画を描いているだけで何もできなかった……とも。
あの「こうだったらよかったのに」があまりに切なくて、気がついたらうるっとしていました。
藤野ちゃんはたぶん救われていた
藤野ちゃんのおかげで京本さんが外に出られたように、実は藤野ちゃんも京本さんに救われていたのだと、私は思います。
京本さんの存在がなければ、藤野ちゃんはどこかのタイミングで漫画を描くのを辞めていたんじゃないかなと。
藤野ちゃんは、どちらかと言えば人に左右されやすいタイプのようだし、いくら好きなこととはいえども、中学生に上がってもずっと描き続けるのはなかなか難しいことだったはず。
けれど、そばにはいつも京本さんがいた。
性格が悪いかどうかは置いておいて、京本さんの手を引っ張っている感覚も、頑張れる理由のひとつだったんじゃないかなと感じました。頼られたりするのって、意外と大きな存在理由になったりしますものね。私も頼るより頼られるほうが好きです(頼るのはむしろ苦手)。
人に影響されやすく、難しい性格をしている藤野ちゃんだけれど、家に帰ればいつも京本さんの存在があった。
ひたすら漫画に打ち込めたのは、それもあったのかなあなんて。
夢に出てきそうな怖さ
ただ、美大のシーン。
あれは駄目だ。
いや、嫌いというわけでも、批判しているわけでもなくて。なにあれ、めっちゃ怖いんだが。息遣いとかがリアルすぎて、ゾクッとしました。
夢に出てきそうな怖さだった……。
映画「ルックバック」が好きな人におすすめの作品
映画「ルックバック」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 金の国 水の国(2022)
- STAND BY ME ドラえもん(2014)
- 数分間のエールを(2024)
まとめ:満足感がすごい
こんなにも濃い内容でたったの1時間。
1時間でこの満足感。
藤本タツキ先生というと「チェンソーマン」が強かったので、こんな作品も描いていたんだなあと驚きました。漫画のほうもちょっと気になります。
Rotten Tomatoes
TOMATOMETER 100% AUDIENCE SCORE 99%
IMDb
7.8/10