
ミッキー17
「ミッキー17」の感想です。
劇場公開当初から話題になっていたポン・ジュノ作品。
想像とは異なり、エンターテインメント性はかなり薄かったように思います。どちらかと言えばメッセージ性が強いタイプの映画。
本記事は2025年11月27日に執筆したものです。すべての情報は執筆時点のものですので、最新の情報はご自身で直接ご確認ください。
ワンフレーズ紹介
使い捨てのエクスペンダブルになったけど、その前に契約書はちゃんと読みましょうねというお話。
作品情報
| タイトル | ミッキー17 |
| 原題 | Mickey 17 |
| 原作 | ミッキー7/エドワード・アシュトン著 |
| ジャンル | SF、アドベンチャー |
| 監督 | ポン・ジュノ |
| 上映時間 | 137分 |
| 製作国 | アメリカ |
| 製作年 | 2025年 |
| 公開年(米) | 2025年 |
| レイティング | G |
| 個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
人生に失敗し、多額の借金を抱えた末に、友人と共に地球外に逃げることにした不運な男ミッキー。元議員のケネス・マーシャルが立ち上げた他惑星への入植団に応募したのだ。しかし、パイロットとして採用された友人とは異なり、ミッキーにはなんの特技も資格もない。ミッキーは契約書もまともに読まず「エクスペンダブル(使い捨て人間)」に申し込んでしまった。これはミッキーが死ぬたびに、外見や記憶が引き継がれたクローンが作られるというシステムである。人類のためと過酷な労働を課せられ、死んではリプリント(クローンとして新たに生まれること)され、死んではリプリントされを繰り返すミッキーは――。
主な登場人物
(以下、敬称略)
ミッキー・バーンズ
(演:ロバート・パティンソン)
返済しきれない多額の借金を抱えた末、ケネス・マーシャルの企画に応募する。が、契約書を読まずに「エクスペンダブル(使い捨て人間)」に申し込んでしまった。以降、命懸けの過酷な労働が課されることに。
ナーシャ・バリッジ
(演:ナオミ・アッキー)
ミッキーの恋人。エリートで、意思表示がはっきりしている。
ティモ
(演:スティーヴン・ユァン)
ミッキーの友人。ミッキーに「ハンバーガーよりマカロンが売れる日が来る」と言い、共にマカロン店を開いたが大失敗。多額の借金を抱えるように。借金取りに命を狙われるようになり、入植団に応募。利己的な性格。
ケネス・マーシャル
(演:マーク・ラファロ)
元議員で、2回落選している。惑星ニヴルヘイムへの入植団を率いている。入植団の支配者。
イルファ・マーシャル
(演:トニ・コレット)
ケネスの妻。美味しいソースを作ることに執着している。
映画「ミッキー17」の感想
映画「ミッキー17」の感想です。劇場公開当初はかなり評判がよかったように記憶していますが、個人的には可もなく不可もなくな印象でした。
主演ロバート・パティンソン
まず、本作を見始めた時の第一声が、
「こ、これがロバート・パティンソンですって!?」
でした(笑)。
ロバート・パティンソンといえば「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(2005)のセドリック・ディゴリーであり、「トワイライト~初恋~」(2008)のエドワード・カレンであり。二枚目を演じているイメージが強かったんですが、本作の彼はめちゃくちゃダサかった(笑)。
何も知らないまま観たら、もしかしたらロバート・パティンソンだと気がつかなかったかもしれないレベル。そういう意味では本当に演技の幅が広い方ですよね。
こんなにダサいのに、これがロバート・パティンソンだっていうの!? と衝撃は受けたものの、終盤の薄く笑みを浮かべるシーンでは突然二枚目に見えたので、これは間違いなくロバートだ……(?)となりました。
この役にロバート・パティンソンをキャスティングするポン・ジュノ監督、さすがすぎます。
エクスペンダブル(使い捨て人間)
本作で、ロバート・パティンソン演じるミッキーは「エクスペンダブル」と呼ばれる使い捨て人間になります。
このエクスペンダブルは、ケネス率いる(入植団の)人類のためという名目で命懸けの仕事に就かされ、死んではリプリント(クローン化)され、というのを繰り返すんですよね。で、冒頭時のミッキーは「ミッキー17」。17番目のミッキーということになります。
これね、17番目に辿り着くまでの過程をコメディータッチに描いているんですが、可哀想すぎて笑えない。圧倒的にしんどいが勝つ。
冒頭時点でのミッキーといえば、職なし特技なし資格なし頭の回転も遅いナイナイ尽くしの男(当然金もない)で、そんなミッキーが他人にいいように利用されているこの感じがもうたまりませんでした。これ以上見てらんない! って。
自分がいなくなっても社会は回る
先述した通り、ミッキーはエクスペンダブル。
その名の通り「使い捨て」です。
例えば、現実世界でも、うっかりブラック企業に勤めちゃったりなんかすると「お前の代わりはいくらでもいるんだぞ!」と言われたり(実体験)。この仕事(会社)は自分がいないと回らないのではと思っても、いざ休んだり辞めたりすると、実はそんなことはなくて、自分ひとりがいなくても平然と回っていたりする。
社会のシステムとして考えると、代わりがないなんてことはあり得ない。語弊を恐れずに言うと、人は誰でも使い捨て(代わりがいるという意味で)。
でも、対個人となると、代わりがないというのは当然ある。
入植団にとってミッキーはただのエクスペンダブル(使い捨て)で、それこそエリートとされているナーシャだってまさしく代わりはいるのだけど、ミッキーはナーシャのことを「唯一無二の存在」だと言っていましたね。
社会システムとして代わりはいても、誰かにとっては唯一かもしれない。個人的に、これこそが健全な状態だというふうに感じてしまうんですが、本作では状況が状況なだけに「代わりならいくらでもいるんだぞ!」状態のミッキーがあまりに可哀想に映るので、不思議な映画だなあと思いました。
映画「オブリビオン」
同じ外見と記憶を持っていたとしたら、それは同じ人間と言えるのか。
劇中に登場するミッキー17とミッキー18は、外見も記憶も同じですが、性格だけは違う。さて、この2人は同じミッキーと言えるのだろうか。
劇中では「リプリントする」という言葉が使われていますが、これはつまりクローン化するということですよね。もうね、本作を見始めてすぐに「あ、これ『オブリビオン』(2013)だ」って思いました。「オブリビオン」は確かクローンでなく複製人間(コピー)だったと思うけど。
何がその人たらしめるのかという話で、それは外見なのか、記憶なのか、人格なのかと。
「オブリビオン」では完全に観客に答えを委ねる感じでしたが、本作ではミッキー自身がそのことに触れています(こちらも委ねているのは変わらないか)。
通常、存在するエクスペンダブルは一体のみであるはずで、同時に二体存在する状態を「マルティプル」と言い、マルティプル状態になると両方ともが排除対象になってしまう。でも、ミッキーは手違いで17と18が同時に存在することになってしまった(マルティプル)。
このままでは両方ともが排除されてしまうということで、18が17を強引に、暴力的に処分しようとする。
その時、ミッキー17は「今までは(死んでも)自分が生き続けるという感覚だった」と告白します。だから死にたくないと。ミッキー17は死んで生き返ってを繰り返す自分を、ひとりの人間として考えていたんでしょうね。自分ひとりが死んで生きてを繰り返していると思っていた。
けれど、目の前にもうひとりの自分が現れた。姿形が同じでもまったく別の存在。性格も違う。ミッキーにとって、それは同じ人物ではなかったということです。だから、今までは「自分が生き続ける」と感じていたそれも、途端に「自分は死んで、こいつ(別人)が生きる」という認識になってしまったのだと思う。
ところが、恋人のナーシャはどちらのミッキーも同じ人間として受け入れていた。これは興味深いところでもありましたね。同僚に「17と18を分け合いましょう」と提案された時も、どちらも同じミッキーだ! そんなことはできない! とキレていましたし。
ミッキー本人としては、外見も記憶も引き継ぐのだから同一人物だと思っていたが、実はそうではなかったのかもしれない……と気付いたというところでしょうか。それに対して、第三者のナーシャは、自覚する前のミッキーと同様にどれも同じ存在だと考えると。
契約書は読むべきだけど
主人公のミッキーはもとはナイナイ尽くしの男ですが、これって誰にでも起こり得ることだと思うんですよね。対岸の火事ではないぞと、人々の営みを皮肉っているようにも感じられました。
というのも、契約書って読んでます?
誰かと契約する際には当然読むべきではあるんですが、隅々まで理解して読んでいる人ばかりかというと、必ずしもそうではないと思うんですよね。
契約後に「え、そうだったの!?」となることは間々あることだと思う。自業自得だと言われればそれまでだけど、十分に起こり得ることだと思います。
程度の差はあれど、ミッキーはそんな人間の迂闊さを体現しているようにも感じられました。
個人的には、もう少しエンターテインメント性が欲しかったかな。コメディータッチで描かれているようなシーンもあるにはあったけど、基本的には終始シリアスな雰囲気で、肩が凝るような感覚になりました。
映画「ミッキー17」が好きな人におすすめの作品
映画「ミッキー17」が好きな人には、以下の作品もおすすめです。
- 月に囚われた男(2009)
- トゥルーマン・ショー(1998)
- インフィニティ・プール(2023)
映画「ミッキー17」が観られる動画配信サービス
※記事執筆時点での情報です(2025年11月27日)。レンタル作品等も含まれます。
| Netflix | U-NEXT | Amazon Prime Video | Hulu | Ameba TV | FOD |
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まとめ:ポン・ジュノ監督らしい映画
個人的には、この手の作品にはもうちょっとエンタメ性を持たせてほしかったなというところでしたが、社会メッセージ性が強いという意味においては、あの「パラサイト 半地下の家族」(2019)を手掛けたポン・ジュノ監督らしい映画だったと言えるのではないでしょうか。
ロバート・パティンソンの新たな一面を見た! という感じでもありましたね。
Rotten Tomatoes
Tomatometer 78% Popcornmeter 73%
IMDb
6.7/10
Filmarks
3.7/5.0

